- 作者: 矢作俊彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/09/25
- メディア: 単行本
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主人公の友人に頼まれて彼の世話をする傑という青年の造形がすばらしくて、彼の存在がこの小説に厚みをもたらしていることは間違いないでしょう。中国人につかまってしまった主人公を助けに来る場面で見せる肝の据わった力強さと、付き合っている女性との場面で顕著に表れる幼さが共存していて、多国籍=無国籍的な出自から来るイメージと相まって、独特としか言いようのない魅力を持っています。
終盤の、主人公が妹に電話する場面が実に感動的で、電車の中で読んでいて思わず目頭が熱くなってしまいました。