『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』(マーティン・スコセッシ)

吉祥寺バウスシアターにて。boid.net樋口泰人さんの日記(12/28付)で、ライヴ用PAでの上映が年内いっぱいと知り、急遽観に行ってまいりました。
生い立ちから50年代の自己形成期、60年代初めのレコードデビューを経て、『追憶のハイウェイ61』の頃までのボブ・ディランを描くこの3時間半にわたるドキュメンタリーで、スコセッシが重点を置くのは、アコースティック・ギターからエレクトリック・ギターに持ち替え、バックバンドを従えてステージに立ち、ファンから「裏切り者」呼ばわりされる60年代中盤のツアーです。現在のディランのインタヴューを元に、おおむね時系列に従って構成されているこの作品で、この時代の映像だけは繰り返し印象的に挿入されます。ブーイングを受けながら爆音で「ライク・ア・ローリング・ストーン」を歌うディランの姿を追いながら、スコセッシはここでもまた、「アメリカ合衆国」自体を主題化しようとしているようです。寂れた鉄鉱山の街に生まれたという事実、ウディ・ガスリーを初めとして数多くのレコードを聴きまくりコピーしまくったというデビュー以前の話などが特に印象的でした。
ということで、これが年内最後の映画となりました。