『シャレード』(スタンリー・ドーネン)

DVDで。近いうちにジョナサン・デミによるリメイクを観るつもりなので、その予習(というか復習)。10数年前に観た時には平凡な作品という印象しかなかったのですが、これがなかなか悪くないのでした。ラストの劇場の場面、ステージの上と下という垂直軸を活かした空間設計と、視覚ではなく音によって相手の位置を測定するというあたりはなんともすばらしいですし、そしてもちろん悪人は高いところから落下するわけです。ケイリー・グラントの役柄はおそらくヒッチコック作品(『北北西に進路を取れ』『泥棒成金』)から来ているのでしょうが、サスペンスであると同時にコメディーでもあるこの映画、オードリー・ヘプバーンが仕事モードのケイリー・グラントを誘惑し続けるあたりには『赤ちゃん教育』(ハワード・ホークス)の記憶も確かに感じられて、だからこそ主役はケイリー・グラントヘプバーンなのかもしれません。やせっぽちのオードリーがぱくぱく食事を平らげるという設定もちょっとおもしろかったりするのでした。