『スパイダーマン3』(サム・ライミ)

新宿プラザにて。
ティム・バートンが『バットマン』および『バットマン・リターンズ』で提示してみせた法則、すなわち「悪人は高いところから落下する」という映画における一般法則を反転させることにより生み出された「高いところから落下するものが悪人となる」という法則が、『スパイダーマン』シリーズの最新作においても採用されています。そもそもスパイダーマンとはその宙吊りの姿勢により自らの「落下」を拒むと同時に、人びとを「落下」から救う存在でもあるわけで*1、ここで「落下するもの」=悪人と「落下を拒むもの」=スパイダーマンという対立の構図が形成されるのですが、『バットマン』のマイケル・キートンが口元に貼り付かせていた二重の否定性が、心の闇に苛まれるはずのトビー・マグワイアに決定的に欠落していることについては、決してこのフィルムの価値を損なうものではないと思います。
 
もうひとつ、ここには「複製」「反復」「復元」の主題も見てとれます。ヴェノムはスパイダーマンの「複製」であり、サンドマンは幾度も自らの姿を「復元」してみせます。ジェームズ・フランコ演ずるニュー・ゴブリンは彼の父であるグリーン・ゴブリンの「複製」に他なりません。そして彼らは言うまでもなく、「複製」され、繰り返し(「反復」)姿を現すものとしての「映画」の似姿なのです。

*1:今回もブライス・ダラス・ハワードキルスティン・ダンストのふたりを「落下」から見事に救い出します。