『キッスで殺せ!』(ロバート・アルドリッチ)

DVDで。昨日観た『バード・オン・ワイヤー』のエンドロールは上から下に降りてくるかたちを採っていて、もしかしてジョン・バダムは『キッスで殺せ!』を参照していたのではないかということが気になり、ひさしぶりに観直したというわけなのですが、途中からそんなことどうでもよくなってしまい、もう何度も観ている映画であるにもかかわらず、最後まで時を忘れて見入ってしまいました。
素肌の上にコートだけを身にまとった女性が夜の道を裸足で走るあの衝撃的な場面に始まり、不意に炸裂する暴力、スピード感あふれる物語展開、階段を効果的に用いた空間設計、そして終末的と言ってもよいラストシーンに至るまで、本当に美しいフィルムだと思います。物語終盤の展開にはもちろん当時の政治的な状況が反映しているには違いないのですが、わたしとしては、あの「箱」から放たれる強烈な光が「<映画>のゼロ地点」に見え、そんなものをあっけなくフレームの中に収めてしまうアルドリッチの過激さには、空恐ろしさを感じます。
ところでこの映画の女性たちがベッドに横たわる姿と口唇器的ありようは、「<映画>のゼロ地点」とどのように関係するのでしょうか、あるいは全く別の主題系を構成するのでしょうか。アルドリッチ作品をまとめて観直したいという気持ちがまた強くなってきました。
(8/30加筆修正)