『たまもの』(いまおかしんじ)

昨年ユーロスペースで上映していたことすら知らず、偶然DVD売り場で発見して以来気になっていたのですが、いつかレンタルビデオ屋さんで借りてこようと思っていて、でも近所の店でも新宿のTSUTAYAでも見つからなくて、しかたないので今日会社帰りに買ってきました。すぐ観るつもりはなかったんだけど、勢いで帰宅後すぐに観てしまいました。ということで遅まきながらの追悼・林由美香
傑作『デメキング』以来、ひさしぶりに観るいまおかしんじ作品ですが*1、この新作も実にすばらしいです。便器にしがみつく、海岸を走り回っていきなりぱたんと倒れ込み足をばたばたさせる、膝を抱えるように座る、イライラして足を踏み鳴らす、といった「まっすぐ立たないこと」「四肢を大きく動かすこと」で身体性を際だたせる演出の一方で、弁当を食べる林由美香のショットから始まるこの映画、意味を持つ言葉を奪われた口唇器が食べ物を、男性器を、口に入れ続けるという側面も持っていて*2、すごく乱暴に言うなら神代辰巳(身体性)と曾根中生(口唇器)の両方の問題圏を視野に入れた、非常に野心的な作品になっていると思います*3

*1:デメキング』以降の作品は未見です。

*2:林由美香の最後のセリフは「おなかへった」。

*3:「神代から曾根へ」という観点から相米慎二の仕事を考え直したいと思っているのですが、それはまた別の話。