『戸田家の兄妹』(小津安二郎)

DVDボックスを第1集から順に観ております小津安二郎特集、戦後の作品は全て観終わりまして、ついに戦前の作品群に突入しました。このあたりからは、お恥ずかしい話ですが初めて観るものがほとんどとなります。今日のこの作品も今回が初めて。サスペンス豊かな演出に、ラストまで画面から眼を離すことができなくなってしまいます。冒頭のシーンで行われる写真撮影が、父親の死と家族の離散を準備するであろうことは、『麦秋』を観ているこちらとしてはすぐに飲み込めて、さらにそこから、兄妹たちの間をたらい回しにされ厄介者扱いされる母親と娘(妹)という、後に『東京物語』で語り直される物語に接続されるわけですが、驚いたのは両親の住む大きな屋敷が舞台になるとき、庭にキャメラが据えられることです。それともあれは手前に縁側が伸びていて、そこから撮っているのでしょうか…いやいや、やっぱり庭からのように見えたけどなぁ。
高峰三枝子が兄嫁(三宅邦子)の横暴な振る舞いに接して、外したエプロンを冗談めかして床に投げつける仕草がよかったです。