『アワーミュージック』(ジャン=リュック・ゴダール)2回目

日比谷シャンテシネ3にて。「1回観ただけではわからない」というわけではないけれど、1回観ると何度でも観たくなるのがゴダール作品です。ということで2度目を観終えた時点ですでにもう一度観たくて観たくてたまらないわけですが、それはさておきこの新作、もちろん「赤」についての映画であり構図/逆構図という「切り返し」をめぐる映画でもあり、それはそれでとてもおもしろいのですが、わたしとしてはゴダールの撮るなんていうことのない夜の街のショット(通りの向こうにお店やホテルの入り口が並んでいて、イルミネーションが輝き、そこにオルガと誰かが話をする声がかぶさるショット)だったり、フランス大使がカーテンの隙間から窓の外の人物を見やるショットなんかに、たまらなく魅力を感じてしまうのでした。窓辺(やベランダ)に立って外を見やる人物のイメージというのは、以前にも書きましたが『勝手に逃げろ/人生』にも頻出しますし、『右側に気をつけろ』や『ゴダールの探偵』にも出てきます。それとなんと言っても講演(講義)の場面がすばらしくて、あの繊細にして大胆な音響設計、あのキャメラの横移動とクロースアップ、映像と音響の全ての要素が絡み合ってかけがえのない時間/空間が作り出されていて、あそこだけでも幾度も繰り返し観たくなるのです。