『ロスト・イン・トランスレーション』(ソフィア・コッポラ)

DVDで。公開時観逃していて、今回が初めてです。視線の対象であることに疲れたビル・マーレイがいて、視線の人である夫が自分には視線を向けようとしないことに不満を感じているスカーレット・ヨハンソンがいて、ふたりが異国のホテルのバーで視線を交わし、見知らぬ街をさまよい歩くうちに、マーレイは見ることを、ヨハンソンは見られることを通して新しい自分を発見し、しかしふたりの接触は微妙に回避され、最後は新宿の雑踏で抱擁を交わして別れることになる、という話に果たしてなっているかというと今ひとつはっきりしなくて、どうもソフィア・コッポラの演出がうまく機能しているとは言い難いのですが、ではこの映画が退屈で見るべきところのない駄作かというとそんなことはなくて、ビル・マーレイスカーレット・ヨハンソンのふたりの俳優がとにかくすばらしいのです。特にスカーレット・ヨハンソンの幼さと成熟を同居させたエロティックな魅力が作品の緊張感を大きく支えていることは間違いなくて、この人を見ているだけでも結構おもしろかったりするのでした。
(06/1/3記)