『オードリー・ローズ』(ロバート・ワイズ)

DVDで。初見。すばらしい映画でした。冒頭とラストで割れる窓*1はもちろんスクリーンであり、悲劇が繰り返しその上で再演・再現される少女の身体とはつまるところフィルムなわけで、要するにこれは非常に強く媒介性を意識した作品なのです。少女の母親がアマチュアの写真家であり、娘の成長を写真のかたちで記録しているというのも「映画をめぐる映画」であるからこその設定ですし、細かいことですが冒頭の公園のシーンで舞台に上がった少女が演劇のまねごとをしてみせていたのも、ラストの催眠実験を予告する細部となっています。このような丁寧に練り上げられた脚本と演出があるからこそ、催眠実験の場面の異様なまでの緊張感が生まれているわけです。主人公一家が住むアパートメントの設計もすばらしくて、階段や窓が豊かな映画的空間を作り出しています。

*1:正確に言うと冒頭の「窓」=フロントガラスにはひびが入るだけで完全に割れて砕け散るわけではありませんし、ラストの「窓」はマジックミラーなのですが。