『大学は出たけれど』『東京の女』(小津安二郎)

DVDで。『東京の女』もまた実にすばらしい作品でした。当時の演出家たちにとっては当たり前のことだったのでしょうけれど、音響を豊かに感じさせる細部が数多くあって、ストーブの上のやかんや、蛇口からしたたり落ちる水や、時計の振り子や、岡田嘉子がたたくタイプライターなどが、画面を音で満たしています。視線の演出も非常に見事で、警官が岡田嘉子の勤める会社にやってくる場面や、岡田が田中絹代の家を訪れる場面など、映画における視線がいかに空間を活気づけ、そこに実体を付与し、さらに人物の関係性を表現するかの見本のような印象すらあります。
(9/29 一部修正しました。)