『ティム・バートンのコープスブライド』(マイク・ジョンソン、ティム・バートン)

新宿ピカデリー2にて。『チャーリーとチョコレート工場』の方が過激だとは思いますが、ティム・バートンダニー・エルフマンの仕事ぶりはこの77分の小品にあっても非常に充実しています。しかしもちろん、このフィルムに込められているミュージカル映画への郷愁は、深い諦念を内に畳み込んだ、屈折したものにならざるを得ないでしょう。死者を描いたアニメーション作品において、初めて可能であるようなミュージカル。
映画のラスト、死者は蝶になって消滅するのですが、となると作品冒頭でヴィクターが窓から放す蝶もまた、もともとは死者の一部だったということになるでしょう。
街のはずれの橋を渡ると暗い森があり、死者の国とつながっているという舞台設計はお決まりではありますが、こういう基本的な部分がしっかり作られている映画は観ていて気持ちがいいものです。親に強いられた結婚のため、婚約者ヴィクトリアの住む屋敷を初めて訪れたヴィクターが所在なげに広間でピアノを弾く、その音色に誘われるようにヴィクトリアが階下に降りてくるというふたりの出会いの場面、それから悲しみに沈むコープスブライドに謝罪しつつ、ヴィクターが彼女と一緒にピアノを弾く場面、いずれもとてもいいシーンでした。